PHA短信(第61号)  

PHA短信

テーマ 日本経済の現状と岸田政権の政策及び今後の課題

 日本経済の現状

 日本経済は相当傷んでいる。1998年にデフレが始まった。2013年に安倍政権が誕生し、アベノミックス(金融政策、財政政策、成長戦略の3本の矢)により、金融政策、財政政策が効果を発揮し、円安、株高が進行して景気は上向いた。GDPも2012年の518兆円から2019年の553兆円まで微増したが、成長戦略の不発と少子高齢化の影響もあり、2020年から再び低迷している。金融政策は、これ以上緩和できない状況まで来ており、アメリカのインフレ抑制のための高金利政策によって、1ドル130円台後半まで円安となっている。一方、2/24に始まったウクライナ戦争の影響により、エレルギーと食糧の価格高騰が世界的に進行している。そのため、我が国は、円安の影響とも相まって、企業物価、消費者物価が共に上昇している。通常、円安は輸出の増加をもたらすため、GDP(=最終消費支出+投資+在庫増加+(輸出―輸入))に寄与する要素であるが、企業が海外生産を進めてきたため、輸出も中々伸びない。現状は、危機的とも言える状況である。

 岸田政権の政策

 このような状況に対し、岸田政権は、「新しい資本主義」の実現という政策を掲げている。新しい資本主義とは、簡単に云えば「今日本が抱えている問題の解決策が日本の成長につながって行く」という考え方である。日本には今どのような課題があるのだろうか。岸田政権は、物価上昇、賃金が上がらない、少子高齢化の進展、災害の多発化を挙げる。こうした課題への取り組みそのものを、付加価値(GDP)創造の源泉として位置付け、官民が協働して、投資、規制・制度改革を実施し、同時に経済成長も実現することがあげられている。そして、経済社会の構造変化に対して、より強靭で持続可能なものに転換し、我々自身の資本主義をバージョンアップして、自由かつ公正な経済体制へと一層強化して行く。これが新しい資本主義の基本的な考え方である。
 政府は、新しい資本主義の具体的政策として、重点投資分野を以下の4つ掲げている。

Ⅰ人への投資:
日本は人口減少が進んでいるが、デジタル化や脱炭素化など、大きな変革に取り組まなくてはならない問題が沢山ある。こうした問題を解決しながら経済成長を実現して行くには、単純に生産性を向上させて収益や所得を増やすだけでなく、人への投資を通じて更なる成長の機会を生み出す
ことが必要である。人への投資の具体的項目として、①賃上げ、②職業訓練やリカレント教育など
による人材の能力開発、③貯蓄から投資へ「資産所得倍増プラン」 を挙げている。

Ⅱ科学技術・イノベーションへの投資:
日本に山積している社会問題を経済成長のエンジンとして行くためには、科学、イノベーションの力が欠かせない。特に、量子、AI、バイオ、再生・細胞医療・遺伝子医療などは国益にも直結する科学技術分野であるため、官民が連携して同分野の投資を拡充し再興を図る。科学技術・イノベーションへの投資の具体的項目として、①AIや医療技術と言った分野で国が国家戦略を明示、②首相官邸に科学技術顧問を設置、③創薬を成長産業とする、を挙げている。

Ⅲ新規創業への投資:
新規創業は、まさに日本が抱えている課題を独創的なアイデアで解決策を生み出す「新しい資本主義の担い手」と考えることができる。こうした新規創業が新たに生まれ、成長できる環境を整えるために、新規創業の司令塔機能を明確にし、大胆に展開して行くというものである。新規創業への投資の具体的項目として、①新規投資への投資額を5年で10倍増、②資金調達制度の創設、③個人保証や不動産担保に依存しない融資の仕組みづくり、を挙げている。

ⅣGX・DXへの投資:
GXとは、グリ-ントランスフォーメーションのことで、従来の化石燃料や電力といったエネルギーから再生可能エネルギーなどに転換する取り組みのことである。又、DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことで、デジタル導入によって人の生活をより良いものにしていこうという取り組みのことである。GX・DXへの投資の具体的項目として、①GX関連に150兆円超の官民の投資を先導、②デジタル改革、規制改革、行政改革を一体的に推進 を挙げている。

 今後の課題

 新しい資本主義は、現在の日本の状況を把握してはいるが、解決のための政策は、決定して間もない。

実行は全て今後の課題である。予算措置も今後の問題である。政策を実行するには最低4年は必要であろう。民主主義の日本では、政府の強力なリーダーシップは必要であるが、賃上げ一つをとっても実際に動くのは、経済界をはじめとする国民である。加えて、新しい資本主義では触れられていない国防問題がある。国防予算をどう確保するか。難題は山積している。このような現状に対して、岸田政権の姿勢は甘すぎると言わざるを得ない。政府は、令和維新の覚悟を持って、強力なリーダーシップを発揮し、優先順位を明確にすると共に平和ボケしている国民への説明・説得に努める必要がある。

(個人正会員 金子一郎)

 コラム

「ロシアがウクライナに侵略して半年が経過したね」「そうだね。現在侵略前に比べて、侵略領土は増大しているが、ウクライナの反攻により一進一退の状況だね」「今後どうなるの?」「欧州の大国は、エネルギーや物価問題の影響で支援疲れの状態だが、世界ではウクライナ支援が増えているよ。米国の姿勢は変わっていないし、何よりもゼレンスキー大統領が強気なので、戦争は長期化すると思うよ」「そうかあ」「ウクライナの人達は気の毒だね。日本はもっと人道支援に力を入れるべきだし、
これを教訓として、国防を抜本的に充実すべきだよ」「成程ね」
(広報分科会員 金子一郎)


寸鉄:働き方の工夫:人より一時間多く働くことは尊いが、今までより一時間少なく働いて
今まで以上の成果を上げることもまた尊い。それには創意がなくては
できない。工夫がなくてはできない。:松下幸之助、
註:今提唱されている、働き方改革、生産性向上の考え方である。

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